その後土方は二股口を守備するこになり、この戦では約三百名を率いて巧みな指揮を取った。

土方の指揮の下、壮絶な銃撃戦を繰り返し新政府軍を撃退したが、四月二十九日矢木来が突破されると、退路を断たれる危険があり土方軍は五稜郭へと撤退を余儀なくされたのである。



そしてとうとう新選組の陰役者である土方歳三最期の時を迎えようとしていた。


陸軍参謀、黒田清隆率いる新政府軍七百名程が夜の暗闇に乗じて箱館に近づいた。


そして別働隊が弁天場台の背後を脅かし寒川村村付近に上陸し、絶壁を登ると箱館山を占領した。


この高台を取られたことで新政府軍は更に勢いを増し旧幕府軍を追い詰めていく。


そして島田魁らが守備する弁天台場が新政府軍に囲まれ孤立していることを知った土方は救出へと向かうべく一本木関門まで出て、攻めてくる新政府軍と応戦した。



馬に乗って戦っていた土方の腹部に衝撃が走ると、土方は馬上から地に落ちた。



腹を撃たれたのだろう、どくどくと止めどなく血が溢れて止まらない。


震える手で銃弾を受けた箇所に触れヌルッとした感覚を感じ息を詰める。


その時悟った。



ーーー・・自分は此処で死ぬのだと。



戦の最中に死ねるのなら本望だ。

それが望みだったし、死に場所には相応しい。


瞼を閉じた土方は僅かに口角を上げた。



若き頃近藤と共に夢を描いた。

そして夢を叶えるために京に上り、無我夢中で此処までやってきた。

大切な仲間を失い、いつの間にか自分の周りには古くから知る友はいなくなっていた。


武士になりたいと駆け抜けた日々の中で、確かに土方は夢を叶えることが出来たのかもしれないが、この地に辿りつくまで悲しみ虚しさで胸が張り裂けそうだった。



ーーー勝っちゃん、もう俺もそっちに行ってもいいか?


どうだ?そっちは楽しいか?

寂しさも苦しみもなく、皆笑えてるかよ?












『歳、よく頑張ったな。こっちは楽しいぞ!お前もそろそろ休め』