永倉が帰って来てあっという間に暮れを迎えるこの日、雪の積もった庭を永倉と肩を並べながら一緒に雪景色をのんびりと眺めている。


寒さに震える矢央を気遣い火鉢を寄せる。



「寒いなら我慢しねぇで部屋に入ればいいだろ」

「うーん寒いけど、雪が積もっていくのを見るには此処からが一番です」


「そういや昔から寒がりのくせに、縁側で庭見てたよな」


だから誰かしら羽織を持ってきて肩にかけてくれたので、気が付けば矢央は着膨れしていたこともある。


「寒いけど、なんかこう肌につんとくるのが好きなんですよ。そういう新八さんだって、さっきからずっと此処にいるじゃないですか」

「俺は雪見酒して身体が火照ってんだ」
 
「風邪ひかないでくださいね」

「ひいたら矢央が世話してくれ」


くいっと杯を傾けたままニヤリと微笑む永倉に頬を染める。


そのあと庭に目をやり穏やかな時が流れるのを堪能した。


この数ヶ月怖いくらいに穏やかで平凡な毎日で、朝永倉と共に寝ている床から永倉を起こさないようにそっと抜け出し朝餉の支度をし、支度が出来る頃には永倉も起きていて、起こしに行くと押し入れに布団をしまっていた。



おはようと互いに挨拶を交わし皆で朝餉を食したあと、矢央はのぶと手分けして掃除洗濯と家事に勤しむ。


その頃永倉は、庭にでて寒空の下上半身をはだけさせ素振りをするのを日課にしていた。

めっきり剣を使う日常とは離れてしまったが、精神統一と運動不足解消には良いのだとか。



そして昼頃になると、一緒に本を読んだり散歩に行ったりと離れていた分を取り返そうと二人の時間を大切にした。


夕刻になると夕餉を食べ風呂に入り、眠くなるまで話に花を咲かせ、いつも先に眠くなる矢央を床に招き入れポンポンと矢央が眠りつくまで見守る。

矢央が寝たのを確認してからそっと床を抜け出した永倉は、少しだけ庭に面する戸を開けて外を見ながら思いにふけた。



「…いつまでもこのままってわけにはいかねぇな」



矢央にとっては漸く手に入れた穏やかで幸せな日々だったが、永倉としても矢央と過ごせるこの日々は幸せなのだが、懸念材料が未だに自分を取り囲むのでこうして矢央が寝たあと毎日一人考えごとをしていた。


矢央は気付いていないが、散歩に出掛けると何度か新政府の連中をちらほらと見かけたので、そちらにも矢央にも気付かれないように上手くかいくぐってきた。

外に出るといつも気が張った状態で、けれども矢央を一人で外を歩かせるわけにもいかないし、ずっと閉じこもっていては変に心配させてしまう。