見ない間にすっかり女らしくなってしまった。

気になるのは男の存在で、永倉は矢央に自分を待つようには言わず矢央の元を去っているので、もしかしたら誰かとーーそれなら自分は邪魔者以外の何者でもない。


しかし矢央の反応や、のぶの言葉からは男の存在は感じずで、期待していいのかと戸惑う。


「矢央、その…抱き締めてもいいか」

「へ?いや、聞かれると…恥ずかしい」


手首を掴まれたまま、もじもじと身を捩る矢央の視線は左右に揺れる。



その態度が良いと勝手に判断すると、安全確保のために包丁を奪い置くと矢央の身体を包み込んだ。

ほんのり香る甘い香りに愛しさが募る。



「新八さん、あの…おかえりなさい」


胸に頬を当て遠慮がちに言う矢央。

さっきは応えてくれなかったが、今度は「ただいま」と返ってきたことに、漸くホッと息をついた。


そして気になるのはこれからのことだ。


皆時々帰って来ていたが、それでも暫くするとまた戦に戻って行くので、永倉もまた戦に戻ってしまうのかと不安になる。

出来ることなら、もう離れたくない。



「…矢央、俺の戦はもう終わりだ。暫く此処で世話になったら此処を出て共に暮らさないか」

「………」

「矢央?」



黙ったままの矢央に今度は永倉が不安になって、やはりもう自分とは一緒にいたくないのかと腕に力を入れて矢央の言葉を待った。


すると小さくだったが、鼻を啜る音がして慌てて矢央の顔を覗き込んだ。



「や、矢央!?」

「…よかっ…たあ。またいなくなっちゃうかと思ってっ…ごめんなさい。泣かないって決めてたのに…ごめんなさい」


堪らなく愛しくて、目の前で静かに涙を流す矢央の頭を撫でたあと、頬に伝う涙を拭った。



「待たせて悪かった。あのあと、矢央を置いてきたことも、一人にさせちまったことも悪いと思ってる。すまなかった」

「…ううっ」

「もう一人にしない。これからは、ずっとお前の傍にいるから…共に生きてくれ」

「……はいっ」



やっと安心できる温もりを手に入れた。