幼馴染って、

誰よりも近くて誰よりも遠い存在。


そんな奴は今日はあたしに言うんだ。





あの言葉を。






Love×Love その1










「七海ー」

「・・・・・・。」

「七海ー」

「・・・・・・。」

「なぁなぁみぃー。」

「・・・・・・。」

「七海?」

「・・・・・・。」

「おい、コラ、七海、無視ってんじゃねえよ。」

「だーっ、もう!鬱陶しいなあ!!あたし今友香とメールしてるでしょ?放っといてよ!!」

「俺が話しかけてんだから無視すんじゃねえ、このブス!!」

「なっ!!」

「あ?」

「幼馴染だからって言っていいことと悪いことがあるでしょ!?それに!あたし、美人だし!!」



情報その①(ヤツ、三島 遥(みしま はるか)はあたし、新嶋 七海(にいじま ななみ)の、幼馴染である。)



そして・・・、あたしの天敵でもある。





「ブスにブスって言って何が悪い」

情報その②(皆があたしを美人と呼ぶ中、ヤツだけはあたしをブス呼ばわりする。)







「ブスじゃないって言ってんでしょ!?」

「じゃあ不細工」

「・・・っ!!!!?」

「ん?なんだよ?」

「遥なんか嫌いッ!!早く帰ってよ!!!」

「おー、怖い、怖い!じゃあ失礼するよ♪バイバイ!」


もう二度と来るな、と心の中で毒を吐く。

なんでこんなに幼馴染だからって酷いことがはっきり言えるんだろう?


親しき仲にも礼儀ありってあるけど、親しくなくてもそうだ。

だから、親しくない・・・ヤツとあたしの間にも礼儀は必要だと思う。

というか、一々あたしの部屋に入ってこないで欲しい。

ヤツは毎日あたしの家に居る。入り浸ることが許されるのは幼馴染だから。


でもさあ、年頃の娘の部屋に入るのってどうなの?


「遥なんか消えちゃえ・・・。」

情報その③(あたしはヤツが大嫌いだ。)








「おいっ!七海!起きろっ!」

「へっ?」

「遅刻すんぞ!?」

「嘘っ、今何時!?」

「8時10分!!」

「なんでもっと早く起こしてくれなかったのよぉ!!?」

「起こしたけど、七海が起きなかったんだろ!?」

「もうっ、早く出てって!!」

「はぁ?なんで?」

「着替えだっ、馬鹿!!」

「お前の体なんか見ても「うるさいっ!出てけ!!」はぃはぃ。」


いつの間にやら寝てたあたしは、寝すぎた。

結果、急いで用意したけど、間に合わず遥と遅刻。


「なんで遥先行かなかったのよ?」

「・・・お前が可哀想だったから。」

「そんなのいらないっ!」

「はいはい、強がんなって。」

「なによ、その態度!子供扱いしないで!!」

「はいはい」

と言って頭をポンポン叩かれた。

腹が立つ、嫌いだ、あたしの方が・・・・、ずっと・・・・。







「あ!はるちゃんとななちゃんだあ♪おはよう♪今日も遅刻ー?」

中高一貫校の学校に通ってるあたしと遥。

高校1年生に2ヶ月前になったばかり。

そして話しかけてきた子は中等部の制服を着ていた。

可愛らしい顔をしてるがズボンを履いている。

男にしとくのが勿体ない。が、

「みぃくんっ!そう!遅刻!最悪だよ~~~っ!!」

「あははっ、そっか、じゃあ明日は気をつけなきゃね?」

「うん!!」

時にはとても男らしくカッコいいのだ。

俗で言うカッコ可愛い男の子で、中性的っていうのかな・・・?

優しいけど、悪戯っ子だ。

そんな彼の名前は永崎 実智香(ながさき みちか)、

本人は女みたいな名前だと言われると嫌がるけど、名前は気に入ってるらしい。

あたしと遥の幼馴染。昔からあたし達3人ともう1人で居るんだ。


「実智香、それ昨日も言ったぞ?」

「あははっ、気にしないでよ。」

「実智香・・・・、髪跳ねてんぞ?」

「あぁ、寝癖。」

直す気がないらしい彼は少々めんどくさがりだ。




「ってか聞いてよ、みぃくん!あたし昨日お風呂入り忘れた!!最悪っ!!」

「大丈夫だよ、ななちゃんは十分可愛いもん♪」

「みぃくん・・・。」

「んー?」

「嬉しいけど、嬉しいんだけど・・・、それ、関係なくない?」


嬉しい、けど・・・、

お風呂入り忘れたのは可愛いからって大丈夫になるわけないじゃないのかな?


「・・・可愛いから、お風呂入り忘れたことくらいどうってことないって♪」

「・・・みぃくんっ!!ありがとう!!」

思いっきりみぃくんに抱きつけば

「おい、コラ。七海。
何ちゃっかり実智香汚してんだよ?」

「あっ、ゴメン、みぃくん!」

「え~?別に良かったのに♪はるちゃんのヤキモチ妬きぃ♪」

「つか、そのはるちゃんってやめろよ。」

「はるちゃんは、はるちゃんだもん♪」

「・・キメェ・・・・。」

「みぃくんよりもアンタのがキモいわよ!!」

「お前が1番キモいと思う。」

「(怒)」

「えぇ、ななちゃん可愛いよ~?」

「実智香は黙っとけよ。」

「はるちゃん、不機嫌~?」

「ウザ」

毎日、毎日、飽きずに世間話?をするあたしたち。




「あ、ねえ!今日さあ、あたし友達と帰るから、みぃくんはコイツと2人で帰ってくれる??」

「いいよ!はるちゃんと2人かあ~。積もり積もった話がいっぱいできるね☆」

「なんだよ、その積もり積もった話って!」

「それは~、はるちゃんのだぁ~いすきなあ「あぁ、もう分かったからいいよ。」

「なあんだ、つまんなぁい。」

「なに?コイツの大好きなって・・・。もしかして・・・彼女!?」

「んー、女ってことには変わりないね。」

「えー!?なになに!!?」

「うっせえな!お前には関係ねえだろ、ブス!!」

「はあ!?」

「んだよ、怒るなよ、ブーッス」

「アンタ・・・殺す!!!」

「うっわ、こえぇ!じゃあ、実智香、放課後になあ。」

「うん、バーイバーイ♪」

「こらっ、逃げるな、バカっ」



毎日の日常化とした鬼ごっこ。

腹が立つけど、あたしはこれが結構好きだ。

コイツは嫌いだけど、楽しいから。