「私を襲ったのは、貴方が指示した人でしょう」


今度こそヤマザキも黙った。


「私たちが襲われた後、もう一台車が来ました。おそらく誘拐に成功した私を回収するための車でしょう。春樹は覚えていました。その運転手は、貴方が以前雇っていた男だと。貴方が叔父様の仕業だというように仕組んだんでしょう」


ヤマザキは、その度の過ぎた肥満の肉をぷるぷると振るわせ始めた。


「私なんかでは叔父様を失脚させる力はありませんし、残念ながら組長の孫としてあなた方を助けることも出来ません」


心に秘めた目的をあっさり否定され、ヤマザキは力を失った。


「残念、だわ。恵理夜さん」


いつの間にか背後に立っていたレミコが、気丈にそう言って微笑んだ。

けれど、その微笑みの向こうにある別の思惑を恵理夜は感じ取った。



この会話は、時間稼ぎだ。目的は――



恵理夜は、部屋を飛び出した。