「私も、一つ奇妙な点を発見しました」


春樹が口を開く。


「私が、シラヤナギ様から薬を受け取りに行ったとき、すんなり部屋に通され、その机の上には厳重に管理されているはずの《Dレポート》がありました」

「どうして、それが《Dレポート》だと?」

「自分たちの記録を知らないほど、愚かではございません」


これはやられた、とシラヤナギが肩を竦めた。


「盗まれやすい状況は、叔父様。貴方が作りましたわね。ここにいる人たちの失脚が目的ですか」


恵理夜は、シラヤナギを正面から見据える。


「それも半分、組への忠誠を試したのも半分ですね。ここで返していただければ、組へ忠誠を誓っているとみなして何もすることはなかった。残念です」


恵理夜以外の全員が、希望を断たれた顔をしていた。