「あら恵理夜さん、こんばんわ」
夏樹と部屋へ向かう途中、レミコの部屋の前を通ると彼女とすれ違った。
「夏樹、何処をほっつき歩いていたのよ」
刺のある声を夏樹に投げかける。
「すいません……」
「部屋の花瓶の水、代えておいて頂戴」
「はーい」
夏樹はこっそりと恵理夜に手を振って去っていった。
「夏樹、庭で会って送ってくれたんです。すみません」
自分のせいで夏樹が怒られたような気持ちで、恵理夜は謝った。
「あら、そうだったの。春樹も夏樹も、貴女にご執心ね」
嫉妬に近い気持を向けられていることに気づく。
「どういう意味ですか」
「恵理夜さん、実は夏樹のことで相談があるの」
半分が嘘で半分が本当だ、と直感した。