「ま、それで、春樹も疑われてたんだ」

「それでって?」

「父親のレポートだもん。あいつにとっては自分が被験者《サンプル》ってこと以上に価値があるんじゃないの」

「それも、そうね……」


自分だけが疑われていると思っていた恵理夜は、考えもよらない視点に足を止めた。



「やっべ、もうこんな時間じゃん」


ふと、時計に目をやった夏樹は慌てた。


「お嬢さん部屋まで送ってくよ」

「屋敷の中なのに?」

「屋敷の中なのに。女の子なんだから、何があるかわかんないでしょ」

「じゃあ、お願いするわ。それより、夏樹も早く風邪治しなさいよ」


ふいの一言に、夏樹は面食らう。