「あなたの研究がことごとく失敗しているのはレポートが物語っていますからね。貴方の出す新薬を信用するのはどうにも……」

「レポート……私の黒い歴史、か。ヒジリさえいなければ、なあ?」

「私は、貴方を、父のように思っていますよ」


無表情に、淡々と春樹は言う。

イチジョウは驚いたように眼を見開く。


「ヒジリ博士のように、だと」


春樹は、微笑んでうなずいた。


「ええ、父のように」

「それは光栄だな」

「でも、決してあなたの功績を褒め称えているのではありません」


春樹は蔑むような眼でイチジョウを見つめながら言った。


「貴方が、母と寝たことを言っているだけです」


そう告げると、振り返ることなく春樹は歩き去っていた。