「冷たいな、お前は」

「見ていたのですかイチジョウ医師」


いろんな人に会うな、と春樹は密かにため息をついた。


「彼女を疑っているのか」

「イチジョウ医師も、疑っていますよ」


春樹は、あっさりとはき捨てた。


「ふん。それより、これが代用の薬だ」


言いながら、薬の包みを差し出される。

しかし、いつも見る薬の包みとは明らかに違うものだった。


「いえ、結構でございます」


春樹は、丁寧ながらもきっぱりとその薬を突きかえした。


「使わないのか?」

「はい。まだ臨床例のないものですね。私たちを実験台にしようと思ったのですか?」


イチジョウは口をつぐんだ。