「おや、」


ふと、春樹が疑問の声を上げた。


「どうしたの?」


いつも置いているクローゼットの隣に薬箱がなく、逆隣に置かれていた。


「いえ、薬箱の位置が変っていただけです。さ、お嬢様」

「……飲ませて」


試すような、不適な笑みを浮かべて春樹を睨む。


「……貴女が望むのなら」


至極真面目な顔で答えられ、恵理夜は少し落胆した。

優秀な執事である彼は、こんなわがままでは動じない。