「貴方のお茶はお預けね」

「仕方ありません。さ、御夕食の前にお薬の時間でございます」

「嫌」


恵理夜は背中を向ける。

しかし、その薬は、大げさでなく恵理夜の命を繋ぐものだ。


再生不良性貧血――血液中の成分が不足する病。


恵理夜はこれをわずらっていた。


「今日も貧血を起こされたでしょう」

「あれは疲れよ」

「元気に動き回れなくなったらどうするのです」

「薬のおかげで元気に動き回ってるなんて、情けない話よね」

「……お嬢様」


なだめすかすような響きに恵理夜はムッとしてそっぽを向いた。