――最後に、いつものように春樹が恵理夜のボタンを丁寧に結ぼうとしたその時、


「わりーわりー伝え忘れ……」


無遠慮に開かれた扉の向こうの夏樹と、着替え途中の二人の目が合う。


「……もっとわりー、お楽しみ中だった?」


着せようとする過程を、脱がそうとする過程に勘違いしたらしい。


「お前がそこまで熱心な自殺志願者だとは知らなかった」

「わーるかったって。シラヤナギ様から夕食のお誘いを伝えにきたんだよっ」

「叔父様から?」


春樹は恵理夜の疲れを気にしていた。


「行かれますか?」

「……叔父様からのお誘いだもの。仕方ないわ」

「かしこまりました」


春樹は、従順に頭を下げた。