「ありがとう!」

切符を買って電車に乗る。

――――……
【琥珀Side】

あ…日暮……。
ここで…降りよう。

日暮で降りても、結局、行くところなんてない。
家は、あたしも親もお兄ちゃんも、帰らないから電気もガスも止めてある。だから、帰れない。とぼとぼ、あてもなく彷徨い歩いていると

「……琥珀?」

…………え?
振り向くと……
「澪くんっ!」
……お兄ちゃんがいた。
お兄ちゃんは澪(みお)っていって、180ぐらいまで、すんなり伸びた背、程よく伸びて綺麗な茶色に染められた髪、整った顔…………どれをとっても非の打ち所のない自慢のお兄ちゃん。名前も格好いい。それを言ったら、
お前の名前のがよかった。
って言われたんだけど、それあたしに言われても…ねぇ。

「琥珀…お前何してんだ。こんなとこで…」

「えっ…いゃ…」

「泣いてたのか?」
流石お兄ちゃん。鋭い。
「ぅん、ちょっと…ね」

「琥珀は、昔から泣き虫だったからな。ダーリンはどうした?」
笑いながら言う澪くん。
「……別に…」

「……そか、とりあえず、うちにおいで。困ってんだろ?」

「ぅん。ありがと。」

「おぅ。んじゃ、行くぜ。」

「うんっ!」