「あ、あの……珠蕗大地…さんですか?」

「…………そうだけど…琥珀?」


「……!」

いきなり呼び捨てにされ驚くあたしを見て。

「じゃあ、俺たちの新居行こ…?」
「あ〜。新居、新居かぁ……ってなんで!!???」


【琥珀Side】

――キーンコーン……

今日は卒業式の日、みんなが笑顔のなか、あたし、月代琥珀はこの上なく悲しんでいます……。

「莉花ちゃーん…なんで笑顔なのぉ〜」
「だって琥珀以外はみんな、北校だから……琥珀ぅ…なんで北校じゃないのよぅ…」
「北校はセキュリティが甘いらしくて…頼んだけど反対されちゃって……」
親が言うには、

北校はセキュリティが甘いんだ。四六時中危険の中にお前をおいてられるか

だそうです……。
あっ、いい忘れてましたが、うちは月代財閥っていう結構有名な財閥です。まぁこうしてる時も命の保障がないわけで……。

「琥珀〜〜?教室戻ろー?」
「えっ…?あ…うん……?」
しまった。
聞いてなかった……。まあ莉花ちゃんなら教室行こうとかそんなことだろう……。


日は暮れ……

「じゃーね…ック……琥珀……また遊ぼうねぇ……うわーん」
「莉…莉花ちゃん…そんなに泣かないでよぅ…もらい泣きしちゃうじゃないーー」

とかなんとか話していたら、下校時刻……
「「じゃあね!!」」
2人で言って家路につく。

「ただいまぁー」

と言っても、“おかえり”は返ってこない。両親は各地を飛び回っていて、家にはほとんど居ない。
というか、その両親とも血は繋がってないけど

……ピロピロリロン、ピロピロリロン

あたしのケータイが着信を教える。画面には“母”と書かれている。いつも、あまり話さないけど、特に話したいとも思わない。

「ママ?」

『そうよ〜突然で悪いんだけど、今から言うところに行ってちょうだい!!』

「???………ぅん…わかった……どこ?」

腑に落ちないがとりあえず了承する。

『えーっとね…―――』

―――――30分後

「ここ……?」

私は今、駅の時計台前にいます……ここで、“珠蕗大地”という人を探せ!!と言われた。時計の下に居るって聞いたんだけどな……と思いながら探していると…目的の人物らしき人がいた。

か……か、かっこいい…///
じゃなくて!!

「あ、あの……珠蕗大地…さんですか?」

「…………そうだけど…琥珀?」

…………この人はなんであたしの名前を…?

「もしかして、月代琥珀?」

「……!」

いきなりフルネームを呼び捨てにされ驚くあたしを見て。

「じゃあ、行こ…?」

にっこり笑ってあたしの手を引く珠蕗大地。不覚にもドキッとする。………って行こ…?ってどこに?

「あの……どこに向かってるんですか?」

「え……?……俺たちの新居だけど…聞いてない?」

「あ〜。新居、新居かぁ……ってなんで!!!??」

「ほんとに何も聞いてないの?」

おもむろに頷く。
歩きながら話そ、と言って歩きだす珠蕗大地。

「俺たち結婚すんの。あ、ちなみに、俺らタメね。」

俺たち……結婚……タメ……

タメってことはこの人は16歳。まだ結婚できない年……だよね?

あたしの考えを察したらしい。口を開く珠蕗大地。

「俺の家、珠蕗財閥。琥珀ん家月代財閥。法律無視なんて当たり前な。ちゃんと役所にも婚姻届出したし。」

「そっか。なんで、あたしなの?なんであなたなの?」

まだあたし結婚すんのには早くない?

「俺が選んだから。琥珀は他の女とは違う気がした。だから選んだ。」

「拒否権は…」

「ねぇよ。んなもん。」

「………あたしのことどう思ってんの?」

「……大好きだよ?」

最後の“?”はなんだ?

とか思ってたら、あたしたちはもう、新居と言うよりお城のほうがあってる、豪邸の前にいた。

「ここ?」

「ん」

ギイィィイィ……
前の門を開く。

「おいで?」
優しい声で、あたしを呼ぶ大地。何故か素直に従うあたし。

「あたし。あんたの妻になるの?」

思わず口に出る言葉。

「うん。てか、もうなってるけど///」

ちょっと紅くなる大地。それをみて胸の奥がしめつけられるあたし。
―――キューーン……

……あれ?

何?あたし。なんでこんな気持ちを会って30分の人に持ってんの…?会って30分とは思えないこの懐かしいような感じはなんなんだろう。

「…く、……はく、琥珀?」

大地が話している間、あたしはぼーっとしていたらしい。

「え…、ごめん。ぼーっとしてた…ごめんね。で、なんだっけ…?」

「体調悪い…?」

今にも泣きそうな、ホントに心配した顔で聞く大地。そんな顔を見ていると、また、キュンてなる。

「大丈夫だよ、ちょっとぼーっとしてただけだよ。」

「なら、いいんだけど……無理、すんなよ?」

「…ありがとう…。」

それから、屋敷の案内をする大地。
そして気付いたこと、

メイドや執事などがいないこと
無駄に広いこと
寝室は1つしかないということ

「大地…ベッド一緒なの?」

「ん」

「「……………。」」
なんか。沈黙。破ったのは、大地。

「……イヤ?」

「……イヤっていうか、大地のこと何も知らないのに、一緒に寝るとか……――」
「俺のこと?誕生日とか?」

「う〜ん、まあ…?」

「誕生日は11月24日生まれの射手座、血液型はA型、好きな食物は、ハンバーグ、嫌いな食物は苦いもの、身長は183㎝、体重は内緒。好きなひとは琥珀ね?///」

体重は内緒って……女かよ…!!てか今サラっと告白された?

「これでいい?」

「え…、うん……?」

思わず頷くあたしを見て、ニンマリと笑う大地。

「じゃあ行こっか。」

え…、どこに?
「…………。」

「そんな、睨むなよ。いきなり襲ったりゃしねぇからよ。」

「んなっ///」
あたしの顔が真っ赤に染まる。それをみて笑ってる大地。

「襲ってほしいのか?」

ぶんぶんと首をふる。
そ、そんなわけなぁ〜〜いっ!!///

でも、もう気づいたら10時だし、明日は、入学式だから早く寝ないと………

―――フワッ……

「……ん?」
なんだ?いまフワッと……
「って、えぇーーっ!!」

「ん?なんだ文句あっか?」
あたしはいつの間にか大地にお姫様抱っこされていた。
「文句大有り!!重いから降ろしてよ!」
じたばたするあたしをものともせず
「やだね。」
と言って、あたしの額にキスを落とす。

――ポスッ
喋ってるうちにベッドにいるあたし。瞬間、布団に潜り込む大地。
「んじゃ、おやすみ〜。スカー」

早っ。もう寝てるよ…!!
仕方なく布団に身を預けるあたし。
「おやすみ〜。」

少しして
―――もぞもぞっ……

ん…?

身体が温かい感覚が広がり、目を開くとそこには大地の胸。

「ふぇ…?」
「…あ、起きちゃった?」
「な、な、な………!///」
「大丈夫だよ。何もしないから……」
「ん…温かぁい///」

……………1日目終了