一年前は接点すらなかったというのに、離れてしまうのが怖くて堪らなかった。

いつの間に こんなに好きになったのだろうか。

そんな思考を、頭のどこかで気持ち悪いと笑う自分がいる。


自宅となるマンションの前で、どちらとなく足を止めた。


もう黒しかない世界。輪郭を奪う夜に包まれた。

寒かったのに、緊張すると体感温度が狂ってしまった。

気持ちの問題なのか、とても熱かった。

ドキドキする胸を空いている方の手で、一度そっと撫でた。

確かほんのちょっと前は違う手が触れていた大切な場所。

そう、恋心があるとされる場所。



ネクタイがない、歪んだシャツを着ている彼が可愛いなと思った。