電車は混雑しているので座れない。
彼の駅から自宅までは一時間程。
しんどいなと思う。
けれど黙って我慢した。
すると人前では手を繋がない彼が、さりげなく人目につかないよう窓側の肩を抱いてくれた。
その温もりが何故か怖くて、なのに不思議と安心した。
膝の力を抜いて預け、そのまま不規則に揺れる電車に身を任せた。
手の平から伝わる温かさが嬉しくて、でも怖くて、どんなことを考えていたか覚えていない。
お喋りな二人は、さっきからずっと沈黙。
それでも構わなかった。
ただ横目で流れる田園風景を見ることにした。
田舎だなと思う。