私はその隙に逃げようと
バックを掴んで玄関へ走った。



手が震えて鍵を開けるのに少してこずった。

すると後ろで何か物音がした。


振り返ると同時に頭に強い衝撃を喰らった。



意識が朦朧とする中、
目に映ったのは金属バットを持ったお兄ちゃん。




見た瞬間に覚束無い足取りで家から飛び出した。






景色が歪む中、必死に走ろうとするけど
足がいう事を聞かない。

心の中で叫ぶように名前を呼んだ。


 宮下………





 新…… 新…


何度も何度も。


鞄を抱えるように持って歩いた。

少しでも制服が隠れるように。









どれだけ歩いたのか解からない。

気がつくとどこかの公園の横の歩道に立っていた。


 どこ……、ここ…



すると前から眩しい光が私を照らした。


それは車のライトだった。

その車から降りてきたのは何度も呼んだ宮下だった。



「鈴香っ!!」


そんな言葉と共に走ってくる。





来なくていいよ……。

もう私は死ぬんだから…



誰も悲しまないから…