しばらく大変そうな姫のためにまたそれから乾杯をして飲んだ。
明日からまた仕事だが、美紗子には関係ない。
美『わたしたちさ、まだ1ヶ月ちょっとの付き合いって信じられる?』
姫『ありえねー。まじ仲良すぎじゃね?』
美『しかも姫わたしの2こ下って考えられなーい!!』
姫『美紗子しっかりしてなさすぎて年上と思えねー・・』
この日は笑いながら夜中まで飲んだ。
そして月曜日、美紗子の出社と同じ時間に姫も大学へ出た。
荷物は置いたまま。
姫『連絡する。荷物まだ置いてていい?』
と聞かれたので
美『うん。大丈夫よ!頑張れ!なんかあればすぐお互い連絡だよー!!』
そう言って姫をラッシュ時間で人の多い駅まで送って美紗子は出社した。
出社するとまたいつもの1週間が始まると思った。
”姫がいなくなると思うと退屈だなー。”
と思って仕事した。
美紗子は正直友達が多いわけではないのでほとんど直帰だった。
会社の同僚にも飲みに行ったり、遊んだりする人もいるけど毎日仕事で会っているので毎日は遊ばない。
”彼氏でもできたらおもしろいんだろうけどな。”
そう思いながら1日を終え退社した。
会社を出ると雨。
”天気予報、傘いらないって言ってたのに!!”
そう思うとあのオフ会の日のことを思い出した。
”あの日も天気予報ハズレの雨だったな。”
ちょっとだけ思い出し笑いをしてしまった。
『美紗子。』
誰かに呼ばれて振り返った。
そこにいたのは翔だった。
取引先の人で美紗子が一目惚れをして付き合った相手。
そしていきなり消えた相手。
噂では辞めて田舎に帰ったと聞いた。
でも本当は百合が嘘を言って気まずくて連絡を取らなくなった。
そして本当は会社を辞めていなかった彼。
美『翔・・。ひ、久々だね・・』
翔『タケルに聞いた。百合ちゃんから聞いたの、違うって。』
”あぁ、そうだ。あの人の名前タケルだった。”
そう思いながら
美『そっか。なんかホントにごめんね。今さらだったけど連絡先わかんなくなって知らないから弁解も出来なくって・・』
翔『いや、俺こそ。いきなり連絡たって。すっげーあのとき頭きてて・・直接言いたかったけど、俺あのとき美紗子をめちゃくちゃにしそうだったから・・。ごめん。』
美『いや、もうそういうのいいよ。』
そう言うと2人とも黙りこんだ。
雨音と車の走る音の中、翔が先に口を開いた。
翔『ちょっと謝ろうと思って来てみただけなんだ。じゃあ。』
その顔つきは昔と変わってなく、美紗子のタイプの顔。
優しい性格、翔の口癖、色んなことを思い出した。
”引き止めたい”
そう思ったが美紗子は言えなかった。
美『うん、じゃあね。』
そう言って駐車場まで雨の中ダッシュで走った。
今、考えていることを吹っ切るかのように。
”翔を引き止めたいなんて思うとかありえない!!毅くんのこと昨日わからないって言っておきながら。わたし気が多すぎ・・”
そう思いながら走った。
キーレスで車の鍵をあけ、ドアを開けようとしたときに後ろから走る足音が聞こえた。
美紗子が振り向いてみると翔がいて、翔は思いっきり美紗子を抱きしめた。
傘もささず2人はしばらく抱き合っていた。
そしてキスをした。
翔『俺さ、誤解ってわかって会いに行ってさ、美紗子の顔見た瞬間にやり直せないかなって思ったんだ。』
翔が美紗子を腕枕してタバコを吸いながら言った。
ここは翔の家。
翔も一人暮らしだ。
あれから2人は美紗子の車に濡れたままだが乗って翔の家に来た。
そして抱き合った。
数ヶ月ぶりに1つになった。
美紗子は自分で
”いい加減すぎる・・この前まで毅くんで揺れてたのに。でももう翔だけ居てくれたらいいよ・・”
そう思っていた。
誰が何と言おうと今の美紗子は止まれなかった。
不安だった気持ち、孤独な気持ち。
色々とあった。
それを今、満たしてくれるのは翔しかいない。
すがりつきたくなるのは当たり前だ。
美『わたしもじゃあって言われたとき引き止めたかったけど出来なかった。だから走って車に行ったの。』
そう言う美紗子に翔はまたキスをした。
そしてタバコを消し、また抱き合った。
そのまま美紗子は翔の家に泊まり、朝方家に家に帰った。
帰るときに
翔『やり直せるって思っていいんだよね?』
その言葉に美紗子は
美『わたしは思ってたけどね。』
と言った。
そしてキスをして家を出てきた。
雨はもうあがっていて、太陽が雲の間で光っていた。
この前と同じ。
気持ちが晴れると雨があがっていた。
部屋に入ると、昨日の幸せな余韻を味わいながらシャワーを浴び、化粧をしてまた出社した。
会社に早く着いたので姫にこのことをメールで連絡をした。
そして出社してきた同僚で前に付き合ってたことを唯一話していた同期の美咲にも翔が仕事を辞めていないということと、ヨリを戻したこと報告をした。
翔は人気があったため、付き合ってるということを同僚にはあまり話していなかった。
辞めたという噂は翔が人気だからこそ流れていたものだったのだ。
美咲はすごく驚いたがおめでとうと言ってくれた。
その日、退社するとき、昨日と気持ちが全く逆ということに気付いた。
昨日は退屈だと思っていたのに、今は幸せで光を浴びながら歩いているような感覚だった。
天気までも逆で雨は全く降っていなかった。
バッグから携帯を取り、見ると着信があっていた。
姫からだった。
すぐにかけなおすと
姫『はい集合~!!』
と言った。
でもすごく明るい声で祝福してくれているというのがすごくわかった。
美『はは。どこにー?』
姫『今大学だから仕事終わったら迎え来て~!!』
美『今駐車場だよ!今からいいの?』
姫『うん!』
ということで美紗子は姫の大学に向かった。
大きな大学で姫は場所は知っていたが、来たのは初めてだった。
大学に着いて連絡すると姫が走って来た。
その姿はギャルの服ではなかった。
メイクも髪の色も全く違った。
お姉カジといえば間違いないだろう。
そんな格好をしている姫にビックリしたが素直に
美『似合う!!!』
と言った。
本気で似合っていた。
そんな美紗子に姫は
姫『よく言われる!ありがとっ。』
と言った。
それから家に帰って家でゆっくり話すことにした。
この前実家に帰ると言ったのにもう集合して変な感じだったがこれは2人にとって緊急事態だから当たり前な行動だ。
お酒が足りないかもということでコンビニでちょっと買っていくことに。
裏道にある小さなコンビニによるとそこに犬が1匹段ボールに入っているのに2人は気付いた。。
箱には【りんご】とマジックで大きく書いてある。
美『捨てられてるのかな??』
姫『たぶんね・・美紗子犬、好き?』
美『うん、すごい好き・・餌とかあげちゃダメだよね?』
姫『うーん・・だよね・・かわいそうだけど・・』
そう言いながらも2人とも店に入るとおつまみのサラミを同時に手に取ろうとしたので『犬に!?』と言い合いながら笑った。
買って犬にあげようとさっきのところに行った。
そのとき車が来て犬の前に降り、犬を箱ごと車に乗せようとしていた。
姫『すみません、拾うんですか?』
美紗子は思わず声をかけた。
男『いえ、保健所です。』
その瞬間美紗子は
美『すみません、その子わたしがもらいます!!』
そう言ってしまい引き取ってしまった。
姫『あんた・・飼えないくせに・・どうすんの・・』
そう言う姫だったが姫もホッとしたような顔をしていたため
美『わたしが言わなきゃ姫が間違いなく言ってたでしょ・・』
と笑いながら言った。
それからとドッグフードとミルクも飼って家に帰った。
部屋に連れて帰ったが美紗子の家はアパート・・
長くはおいておけない。
見つかれば間違いなく犬共々追い出されてしまう。
とりあえず写メを撮って2人で友だち全員にメールをした。
『犬を飼ってくれる方いませんか?拾ったんですけど家では飼えません。オスでまだ子犬です。名前はりんごと書いてあり、元気です。色は茶色で足の先とお腹が白です。お願いします。』
2人は返ってくるたくさんの返事を見ながら
『ダメばっかり・・』
と言い合った。
いい返事なら
『わたしも友達にまわしてみるね。』
とかそういうのはあったが期待はできそうもなかった。
竜次は犬を実家で3匹飼っていると言っていたから姫が電話で
姫『あと1匹くらいいいじゃん!!!!』
と言ったが返事は厳しかった。
犬を飼い始めるというのは美紗子や姫の年代からはあまりない。
そんなわたしたちをよそ目に犬はグッスリと眠っていた。
それがとても可愛かった。
返事を見ながら翔の話を姫にすると姫は喜んでくれた。
姫『幸せになるんだよ。思ったように生きてそれで美紗子が幸せならそれが全て正解だよ。』
と言ってくれた。
美紗子は泣きそうになるくらい嬉しかった。
姫はというと洋介と連絡はとっているものの、不倫相手とも相変わらずの関係だった。
それでも姫は幸せそうだし、不倫というものに嫌悪感を持たない美紗子なので幸せならいいやと思った。
姫も不倫相手とこれ以上の発展を望んではいないから。
そんなとき姫にメールが届いた。
『飼い手は見つかった?』
こんな少々期待できるメールをしてきたのは毅だった。