『うわー…雨だし。』

職場から出た美紗子は呟いてしまった。

会社の前の道は車が水しぶきをあげなから走っていた。

しきりに車たちは忙しそうにワイパーを動かしている。

美紗子は新しいパンプスを履いてきたことを思いっきり後悔していた。

”汚れちゃったらイヤだな…高かったのに。”

そう思ったけど雨はやむ気配すらない。

それどころか空のむこうはもっと暗くてまだ雨が強くなりそうな予感がしていた。

”今日、飲み会だし濡れて行くのは避けたいかも…”

そう思って予定外の出費だけど目の前を通ったタクシーを止めた。

ウインカーをつけて止まってくれたタクシーに乗った女、井上美紗子(22歳)、職業OL。

外見はスレンダーで身長は155センチくらい。

顔はどこにでもいそうなお姉系の巻き髪をした普通の顔。

運転手に行き先を告げた後にチラッとシルバーの時計を見たら6時40分。

飲み会は7時。

『すみません、できるだけ急いでください。』

そう美紗子はタクシーの運転手に言った。

外は雨、そして今はラッシュの時間。

20分で間に合うなんてとても無理だがタクシーの運転手が裏道を知っていたお陰で奇跡的に25分くらいで着いた。