家に戻ると喪服はもうベタベタのボロボロで着れるような状態じゃなかったので誰かに借りようと思い、前の会社で同じだった美咲に連絡をした。
美咲は事件のことを知らず、すぐに喪服を持って来てくれた。
美咲『今日が日曜日でよかった・・。大丈夫?わたしも一緒に着いていくよ。』
そう言ってくれたが
美紗子『大丈夫。1人で行ける。心配しないで。』
そう精一杯の笑顔で言った。
美咲はその笑顔が心配だったが、また夜に来るねと言って帰って行った。
美紗子は喪服を着て毅の葬儀会場に向かった。
時間の少し前に着いて会場を見るとたくさんのひとがいた。
少し笑っている人がいたので殴りたくなった。
美紗子は香典を渡して名前を書いて1人でソッと座った。
遺影の写真の毅の笑顔が愛しくてたまらなかった。
そしてその前には小さな箱に入った毅の骨。
どうして昨日の通夜に行かなかったのだろうとすごく後悔をした。
最後の姿だったのに。
”お願い、誰か嘘だと言って・・もう一度会いたい・・あの笑顔を見たい・・”
そう思うがもう届かぬ願いだった。
葬儀が始まり、美紗子は目を閉じていた。
思い出す毅の声、大きな手、笑ったときに細くなる目。
触れた唇の温かさ、美紗子を包んでくれた大きな体。
”どれか1つだけでも置いていってほしかった・・”
また涙が溢れた。
葬儀が終わり、毅の両親に挨拶をした。
そのときに母親が
『来てくれると思ってたわ。昨日、見つけたのコレ。』
そう言って小さな箱をバッグから出した。
見た瞬間わかった。
美『指輪・・ですね・・。』
どうやって渡すつもりだったのかはもうわからないが、包みには包んでなく、ただ箱の中に指輪が入っていた。
『プロポーズ、するつもりだったみたい。あなたのものよ。これは受け取ってあげて。』
そう言って手渡された。
美紗子はそれを開け、キラキラ光る石のついた指輪を手に取り、左手の人差し指につけた。
美『もう・・左手には付けれないですね・・』
そう言って涙を流した。
美紗子は前にもらったペアリングも右手に付け替えていた。
もう、叶わない願いを思い続けるのはやめたかった。
まだ前向きなことは考えることはできないが美紗子にとっては指輪の位置を変えることは精一杯の前進だった。
『そうね。左手には・・』
そう言って母親も涙を流した。
『ごめんね、あの子があなたを1人にして・・ありがとうね。あの子を思ってくれて・・』
そう言う母親を親戚だろう、同じ歳くらいの人がなだめていた。
美紗子は
美『わたしは毅くんに出会えたことを誇りに思っています。どうかお元気で。』
そう言って逆を向き、葬儀会場を後にした。
その数ヶ月後、美紗子は美咲と街を歩いていた。
美咲が前向きになるため、占いに誘ったのだ。
右手の薬指にはペアリング、左手の人差し指には婚約指輪。
位置は変えたがまだはずすことは出来なかった。
占いの店に行くと名前を書き、奥の部屋に通された。
そして姓名判断などした後、占い師がジッと見てこう言った。
『あなたは大切な人を何人か失います。後悔しないよう心の準備をしてください。あなたは20代前半はすごく恐ろしいことが起きるかもしれません。』
それを聞いた瞬間、
美『遅い・・どうして今になって・・また思い出させるの??』
そう言ってその部屋を飛び出して店を出た。
追いかけてきた美咲に
美紗子『大切な人を失いますだって!!過去知ってるんじゃないって感じよね・・』
そう言ってブサイクな笑顔を見せた。
美咲はここに連れてきたことを後悔して
美咲『ごめん。』
そう言った。
だが美紗子は美咲が謝る意味がわからないと言って明るく振舞った。
これ以上人に迷惑はかけたくなかった。
それからの美紗子はもう泣かないことを決めた。
忘れるのではない。
ただ、泣く姿を見飽きた、うざいと言っていた姫の言葉を思い出した。
信じてるという最後の姫の言葉を守るためにも生き抜くことも決心した。
大好きだった4人をもう少し待たせて1人だけ歳をとっていつか再会してやる!!
そう決めた。
美紗子の心の傷はすごく増えてしまったが、強くもなれた。
毎日照らしてくれる太陽のように、明るくみんなに好かれる大きな存在になれるよう心がけた。
そして太陽のように眩しかったあの4人を一生忘れないよう、財布の中には5人で写った写真を入れた。
ねぇ、毅。
あなたは幸せだった??
わたしはあなたと会えて最高に幸せだったよ。
ただ、わたしの心残りは・・・
プロポーズの言葉、知りたかったよ。
何て言うつもりだったの??
わたし毅のこと忘れないよ。絶対。
でも会いたいよ。すごく。
あなたの笑顔。
わたしの頭を撫でてくれた、わたしを引っ張ってくれた手。
あなたの大きな身体。
あなたの香り。
全て忘れない。
毅は向こうで幸せに過ごしてね?
それがわたしの願いだよ。
わたしはわたしでこっちで頑張る。
愛してる、愛してる。
この想いは絶対に風化させないから。
毅に怒られそうだからわたし・・・もう、泣かないから。
強くなるから、心配しないでね。
ほんとうにほんとうに・・・、言い足りないけど・・・
毅、ありがとう。
愛してる。ずっと。
ねぇ、姫。
姫が疫病神なわけないじゃん。
てか、神様なんて信じない。
こんないい人たちの命を奪うわけないもん。
だから神が付く人はいないんだよ。
わたし、今でも思ってるよ。
姫以上の友達はできっこないって。
姫と出会ってわたし、ほんとに成長できたよ。
姫の言葉、一つ一つすごく重みがあったよね。
強い。
ずっとそう思ってた。
わたしもなれるように頑張るから。
姫以上はもちろん無理だけどわたしの失敗そっちから見て笑わないでよ?
本当に本当に大好きだよ。
お礼、いくら言ってもたりないけどウザイってまた言われるから一度だけ。
ありがとう。
ねぇ、竜ちゃん、もっくん。
2人はいつも笑わせてくれてたよね。
いつもお笑い担当。
そんな2人はわたしの大きな励みだったんだよ??
こんな素敵な人たちとあのオフ会で出会えたことはわたしの誇りなんだ。
わかる?
2人がすっごく好きだったの。
大切に、いつも見守ってくれててありがとう。
わたしもう大丈夫だよ?
心配しないでいいからね。
そっちでいつもみたいにバカやってて。
そして会ったときはまたバカなこと言って話しかけてきて。
ありがとう。
そして数年後--------------
美紗子は27歳になっていた。
あの頃の毅と同じ歳。
今でも美紗子は毅や姫、竜次やもっくんのお墓を定期的に訪れていた。
もちろん財布の中には5人で写ったとびっきり笑顔の写真。
それを見るたびに微笑んでしまう。
左手の人差し指に毅にもらったペアリングはまだつけている。
姫にもらったお酒は空になってしまったがヒールのお酒の容器は綺麗に飾っている。
竜次にもらった観覧車のオルゴールはたまに鳴らして眺めている。
もっくんにもらったバスセットは有難く使ったが入っていたカゴの入れ物は小物入れに使っている。
時間がたっても美紗子は4人を忘れることはない。
そんな美紗子の左手の薬指には指輪があった。
あれから2年後、25歳のときに美紗子は結婚した。
相手は美紗子の命を救った幸二。
仕事は海の近くの田舎の郵便局員で今は前に美紗子が住んでいたアパートに姉の貴子が住み、あの海の見える小さなアパートに3人で美紗子らが住んでいる。
美紗子と幸二には1人の家族ができた。
女の子で名前は優姫子(ゆきこ)。
姫から1字使わせてもらった。
2人はあれから、連絡を取っていた。
最初は恋愛感情など全くなく、【生きてるか?】などそういうやり取りだった。
それから貴子が美紗子の家の近くに転職したことがきっかけで美紗子の家に引っ越すことになり、幸二の家にも貴子と一緒に遊びに行くことが多くなった。
そして自然に惹かれあい、毅のことを忘れなくてもいいからという形で2人は結ばれた。
毅への思いは風化しないが、美紗子は幸二も愛している。
毅への思いは幸二も理解している。
幸二は毅も愛している美紗子を愛した。
何も言わないし言う理由もない。
美紗子は理解のある幸二に感謝していた。
そして今、第二子を妊娠している。
性別はわからないが、2人は男の子だったら名前を決めている。
竜毅(たつき)と。
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