美紗子もピッタリ寄り添い、

美『ね、さっきのプレゼントあけていい?』

と聞いてみた。

すると毅は抱きしめていた手と繋いでいた手を離して

毅『うん、いいよ。』

と言ったので美紗子はプレゼントを置いていたところに行き、ティファニーの袋を持ってまた毅の横まで来た。

目の前で包みを開けて中に入っていた箱を開けると、指輪が出てきた。

中を見てみるとMtoTと刻印があった。

感動して言葉が出らず、涙目で毅の顔を見ると毅もポケットから自分用の指輪を取り出し

毅『もし、俺とこれから付き合ってくれるなら受け取って・・ください。』

と照れ臭そうに言った。

美紗子は頷いて指輪をはめようとした。

すると毅が指輪を奪って指輪をはめるさせるように持ち、どっちの指?という風に指輪を持つ手をちょっと振った。

美紗子は左手はやはり結婚のときかな、と思い右手を差し出した。

すると毅は逆に美紗子の左手を取り、薬指に指輪をはめた。

指輪は毅の勘で大きさを選んだがピッタリだった。

毅『ほかの男がよってこないように左手にする。』

その言葉にすごく美紗子はキュンとした。

そう言った毅の持つ指輪を次は美紗子が持ち毅の左手にはめた。

ちょっときつかったがどうにか入った。

美『ありがとう。毅くんも他の女の人がよってこないように左手ね。』

半泣き状態だが最高の笑顔で美紗子が言うと毅は優しくキスをした。

5秒、いや10秒。

長めのキスだった。
唇が離れ二人は見つめあった。

そしてもう一度キスをした。

唇がまた離れた後、

毅『3回目・・』

と照れ臭そうに言ったのを美紗子は

美『4回目だよ!!!!覚えてないそうですが・・・。』

と強く言い直した。

そっかというような顔を毅がしていると次は美紗子から毅に抱きついた。

そしてまたキスをした。

毅『やばい・・』

そう呟く毅に不思議がって

美『なにが?』

と上目遣いふうに毅を見つめると毅はまた止まらなくなりキスを続けた。

毅『いや、俺今相当幸せかもって思ってさ・・絶対これからは守るから。美紗子ちゃんのこと。何かあったらまず頼って。』

そう言って強く抱きしめた。

美『わたしも幸せ。わたしも毅くんを守る。』

美紗子は今、言いようもないくらい幸せを感じていた。

そして熱くキスをして毅の手は自然と美紗子の胸へ・・

美『言いにくいけど・・わたし多分生理中・・』

そう言うとそうだったという感じで手は美紗子の頭をポンポンとたたいた。

美『毅くん、それ癖?』

そう聞く美紗子に毅は意味があまりわからず

毅『え?なにが?胸さわるのが?』

そう言う毅を美紗子は軽くポカッと打って笑いながら

美『違う違う。頭ポンポンってしてくれるの。』

そう言うと

毅『あぁ、そう言われたら・・でも誰にでもはしないけどね。』

そう言いながら次は頭の後ろに手をまわしてまたキスをした。


毅は今日はずっと一緒にいたかった。

やっと会えてやっと一緒にいれる。

もしまたいなくなったらと思うと怖くてたまらなかった。

毅『泊まってっていい?』

呟くと美紗子は笑顔で

美『一緒にいて?』

と言った。

それから美紗子はシャワーを浴び、毅は美紗子がシャワーした後に貯めたお風呂に入った。

そして同じベッドで抱き合いながら寝た。

この幸せは2人はずっと続くものだと思っていた。

だが、これは悲劇の中の一時の休息であることでしかないということをまだ誰も知らなかった。

これから訪れる悲劇へのカウントダウンはもう始まっていた。
それから朝、毅は家に帰り仕事に行った。

美紗子はクビになっているだろうとわかりながら職場へ行き、今までの経緯をすべて話した後、退職届をちゃんと提出して挨拶をした。

帰りに携帯電話を機種変更で購入してりんごのところへ向かった。

久しぶりに会ったと思ったのはりんごの姿を見てからだった。

美紗子の知っているりんごよりはるかに大きくなったりんごの姿に驚いた。

だが、りんごは美紗子のことをしっかり覚えていてしっぽを振ってワンワン吠えて喜んだ。

そんなりんごと美紗子は寒い中、夢中で遊んだ。

それから預かっていた合鍵で家の中に入り、ちょとだけ台所を掃除したりした。

そして洗濯物がまだ洗っていない状態だったので洗濯機に入れて洗濯をした。

そんな中、美紗子は翔のことが気がかりだった。

翔から乱暴を受けたということを覚えていない美紗子は翔は今どうしているのか心配だった。

だが、毅に黙って会いにいくこともできない。

”姫に聞いてみよう。だれもおかしいほど話題を出さないし何か知ってるのかも。”

そう思っていた。
しばらくすると毅が帰ってきた。

りんごが吠えたので外を見ると毅がりんごにジャーキーを与えていた。

美紗子も外に出て、

美『一緒に散歩行こっ』

と言うと毅はおう。と言ってりんごの鎖を外して手に持った。

前、一緒に歩いた川辺を手を繋いで歩いていると美紗子が

美『久しぶりなんだよね、この道歩くのも。信じられない。数日前も歩いた気がするけど・・』

と言った。

毅『美紗子ちゃんの最後の記憶の次の日に俺ら、ここで付き合うって決めたんだよ。』

そう言うと美紗子は驚いたがなんとなくモヤモヤ感が出始めた。

美『そうなんだ!ここで・・そう言えば・・ススキがあったような・・あー思い出せない!!』

そう言って足をバタバタさせながら歩いた。

毅『いいじゃん、思い出さなくたって。今また一緒にいるんだから。』

そう言って手をぶんぶん振りながら歩いた。

その時、また美紗子の中がモヤモヤした。

”この感じ、デジャヴ!?なんか覚えがあるような・・”

でも深く考えずにまた2人は川辺をずっと歩いた。

木々はまだ芽も出さずに寒そうにたたずんでいた。

家に帰り着くと毅がりんごに餌をあげ、美紗子は来るときに買ってきた材料で夕食を作り始めた。

ハンバーグを作った。

毅は美紗子がハンバーグを作る間、タバコを吸いながらゲームをして待っていた。

そして出来上がり、2人は食事をした。

初めての2人っきりの食事。

なんだか新婚みたいで嬉しい気持ちでいっぱいだった。

食事をして片付けた後は昨日のようにキスをしたり抱き合ったり、流行のゲームをしたりと過ごしていた。

ただ、時間だけが刻々と過ぎていき、明日仕事の毅は早く寝なきゃと思い、美紗子は帰ることにした。

美『また明日来るね。』

そう言うと毅はこの前、来ると言っていきなり消えた美紗子のことを思い出した。

また不安になってしまい、後ろから抱きしめて

毅『泊ってってよ。』

と言った。

”毅くんて意外と甘えん坊だな・・クールそうなのに。”

心の中で笑いながらもそれに応じることにした。

お風呂を洗って先に毅を入れるように勧め、毅が入ることに。

毅が先に入れば生理中である美紗子も次に入る人がいないから安心して湯船につかれる。

その順番でお風呂に入った。

美紗子の家とは違い、やはり一戸建てのお風呂は広く、のんびりと入った。

だが、美紗子にはよく温泉などに通っていたイメージがあり

”いつだったかな?”

と思っていたが、思い出せなかった。

そして一緒のベッドでその日は早めに寝た。
その同じ夜、竜次と姫はデートをしていた。

食事をとり、夜景のきれいなところに車を止めて話していた。

話題は昨日美紗子の前では話せなかった美紗子の話。

姫『美紗子、この約5ヶ月間いったい何してたと思う?』

この話題はやはり出てしまう。

竜『そうだな、やっぱり車でウロウロしてたんだろうね。』

姫『でも忘れてるってことは思い出したくないことなのかな?』

そう言うと竜次も回答に困った。

竜『思い出したくないって例えば?』

姫『うーん・・・なんだろう。例えば・・ホームレスだったりとか・・』

竜『いや、美紗子ちゃん車あるから外じゃ寝ないだろ!!』

笑って竜次が言うと姫は笑ってそっか。と言った。

だが、2人は美紗子の消えた5ヶ月間が気になっていた。

姫『変なこと・・してないよね??』

竜『変なことって?』

そう言うと姫は言いにくそうに

姫『人、殺してたりとか・・』

そう言うと竜次は姫の頭をかるく殴って

竜『あの子はたぶん動物も殺せないとおもうけど?』

姫『そうよね。わたしも思うけど思い出したくないようなことってのが頭に浮かばないよ・・』

結局その夜、2人の意見が一致するような話は出なかった。
次の日の朝、美紗子は朝食を作って毅を送り出し、りんごと少し遊んだ後にコンビニで求人情報誌を購入して帰った。

家に帰ってパラパラと見て気になるところに折り目を入れていた。

早く美紗子も仕事を見つけなければ家賃がヤバかった。

そして気がかりだった翔のことを聞くため、知ってるかもしれない姫に連絡をしてみた。

姫『もしもし?』

姫は普通に電話に出た。

美『姫~、やっほ。今大丈夫?』

大丈夫という姫に今から会えないか聞いてみた。

姫は大学に2月末はほとんど行かなくていいと言っていたのを思い出したからだ。

今家にいて何もないと言うので美紗子は姫を迎えに行くことに。

姫の家に向かう途中、大きな畑道を通る。

そこでまた何かを感じた。

”こういう道、ここじゃなくて・・どこか違うところを1人で最近通ったような・・”

そう思うがやはり思い出せない。

美紗子はたまにフッと思い出すことが記憶のない5ヶ月に関係していそうとは薄々気付いていた。

だが、心のどこかに思い出してはいけないような気がしてならなかった。