姫『あのクソ男。自慢の顔ボコボコにしても気がすまない!!!』

怒っている姫をそれから毅はずっとなだめ続けた。

それから2人は近くの警察に行くことにした。

間違いなく失踪だろうと思って。

だが本籍が必要ということを知り、2人とも美紗子の実家のことを全く知らないことに気付いた。

美紗子は家のことは何一つ話したことがなかった。

あまりにひどくて話すことができなかった。

捜索願は一応名前、住所、生年月日、車のナンバー、動機、写真など書いて提出することが出来た。

帰りに雨が本降りになってきたが2人の心の中のほうがもっと大降りだった。

物足りないというか、大きな穴ができてその穴に自分らがはまって上がれないというような感じだった。

そして美紗子の家に帰り、美紗子の実家に繋がるものを探した。

出てきたのは卒業アルバムで後ろのページに住所が書いてあった。

そこは美紗子の家から1時間ほどの距離のところで、美紗子の家と実家の中間くらいの距離に姫の家があった。

2人はこのことを伝えに家に向かった。

よく考えれば実家にいるかもしれないというわずかな期待も持って。

夜の雨の道。

視界が悪い中、毅は車を飛ばした。

そしてかなり探したが住宅街の中に同じ住所で井上という苗字の家を見つけてここだと確信した。

家は電気がついていて人の気配があった。

だが、美紗子の車は近くには止まっていなかった。

2人は美紗子の実家の玄関の前に立ち、インターホンを鳴らした。

今の時間は10時半。

迷惑だろうが、まだ起きているだろうという時間だ。

ただ、家がスロープになっていて、玄関は自動ドアもついていた。

違和感を感じたがあまり気にはしなかった。



『はい。』

声が聞こえた。

たぶん母親だろうという声。