それから数ヶ月間、美紗子はずっとウロウロしていた。

初日はその県のヘルスの入店体験で稼いだ。

ヘルス初体験ということでその初々しさでOLの1日の給料とは比べ物にならないくらい稼げた。

相手は汚いオヤジだったが、なにも感じなかった。

それからも夜の仕事、初体験を偽り、お金がなくなると何度か色々な県で色々な店の入店体験をしていた。

2,3日働いたときもあった。

ヘルスもあれば、デリヘルも。

たまにはソープもしていた。

何も考えなかった。

身体を売ることは初めてだったのに抵抗さえなかった。

稼いだお金ではたまに使う駐車場代、ガソリン代、食費、温泉代、コインランドリー代、最初に買った安物の下着とTシャツとジーンズを買った。

コートやマフラーは家を出たときに着てきたものをずっと使っていた。

寝るときはいつもどこかの道の端に車を止め、車の中で寝た。

港の駐車場で寝たこともある。

山道でも海辺でもパチンコ屋の駐車場でもスーパーの駐車場でも。

こんな生活をしているのになぜか家に戻る気がしなかった。

クビになっているだろう仕事のことも、初日から考えたことがなかった。

心配しているだろう友達や大切な人のことさえも考える余裕がなかった。

というより一度も考えることが出来なかった。

姫ももっくんも竜次も翔も毅さえも。

初日、自分にゾッとした感情以来、美紗子には感情が存在しなかった。

ただ、生きているだけ。

美紗子の誕生日は12月30日だった。

だがそれさえも忘れていて、自分から自分へのお祝すらすることができなかった。

そしていつの間にか年も明けた。

そして2月19日、フラリと美紗子は家に戻った。

めちゃくちゃにしていた部屋が綺麗に片付けてあることに気付くこともなく美紗子はベッドの上で久々に寝た。