涙を気付かれないようにふき、前を向いた。

川辺のススキは風になびいていてススキとススキが触れ合っているのを眺めた。

美紗子は何もしゃべることが出来なかった。

ふいてもふいても流れてくる涙に絶対気付かれたくなかった。

美紗子だってりんごが来てから毅に惹かれていっていたことくらいわかっていた。

それでも翔を裏切れないから表に出さないように、考えないように、思い出さないようにしていただけっだ。

そして毅が黙っている美紗子の前に何か言いたそうに来た。

毅『美紗子ち・・え、なんで泣いてるの?ってごめん、俺かのせいか。』

そう言って頭をポンポンとたたいてまたごめんと言った。

そのとき、あのカラオケで助けてもらったことを美紗子はふいに思い出した。

そう思うとまた居た堪れなくなって逃げ出したくなった。

りんごはその姿を見つめていて、【早く行こう】とか【なにしてるの?】とかそういう感じで見つめていた。

”りんごを散歩させて早く翔のところに行かなきゃ”

そう思っていたのに気がついたら毅の胸にもたれかかっていた。

完全に無意識の行動だったがこれが美紗子の本心なんだと自分で思った。

”離れたくない。”

その美紗子を毅はまたギュッと抱きしめた。