むくれた顔をするシュウが、なんだかおかしくて、俺は自然と笑っていた。
ああ、いつぶりだろう。普段から、こんなに声を上げて笑うことはあまり多くなかったけれど。
それでも、こういう状況になってからはずっと、笑うことなんて忘れていた。
「桐生は、絶対いじめっ子の素質があるね」
「ご馳走様、先生」
ふ、と笑みを浮かべて見せれば、シュウは頬を膨らましながら俺を睨んだ。
「折角、商店街を隅々まで案内してあげたのに、桐生ってば何も買わないんだもの」
シュウの両腕にはビニール袋が下げられていて、どちらも食材でパンパンになってしまっている。袋から豪快にはみ出た大根が重そうだ。
どうやら、彼女はなかなか"断る"ということが出来ない人種らしい。
「あれだけまわってミネラルウォーターと惣菜ひとつってどういうこと!?」
「…料理したことねぇんだもん」
「これだからセレブは」