やっぱり、小林秀宇はおかしな人だ。
有名な賞をいくつも取りながら、彼女が本を出すのは決まって『星とヒバリ社』という小さな出版社のみ。
ドラマ化も、映画化も、すべて拒否。
とはいえ、これまでに出した本は悉くベストセラーとなっているのだから、もっと大都会の高層に部屋を持っていてもいいはずなのに。
こんな小さな町で、コロッケを嬉しそうに頬張っている。
「変な女」
「…ちょっと、折角コロッケ奢ってあげたのに、返してもらうよ!」
「あ、これ美味い。コロッケとか久し振りに食った」
「あのねえ!」
シュウを真似して豪快に頬張ったコロッケは熱くて、飲み込むのに少し時間がかかった。