返事はしなかった。

一歩前を歩くシュウを見ながら、溜息をついた。


商店街に近づくにつれて、人通りも多くなってきた。少し心配はしていたけれど、こんな格好をしているため、流石に誰にも気づかれることはない。


「シュウちゃん」


突如、声を掛けられたシュウが立ち止まる。八百屋の女性が、嬉しそうに微笑みながらこちらを見ている。


「こんにちわ。なに?今日は随分美人なお友達を連れているのね」

「隣に越してきた、桐生…」


ちらりとシュウが見上げるものだから、コホンと咳払いをして笑みを浮かべる。


「桐生怜です。宜しくお願いします」

「レイちゃんね。宜しく。野菜買うときは、うちに寄ってね!とっても新鮮で美味しいのよ。シュウちゃんのお友達ならオマケしちゃう!」

「は…はぁ、ありがとうございます」