「そんなに見ないでくれる。見物料とるよ。1万円」
「なんだそれ。完全に詐欺じゃねか」
「ふん、黙れこのやろう」
この女が、あのベストセラー作家"小林秀宇"だというのだ。
繊細な色彩と言葉で独自の世界観を造りだす人。
処女作"夜明けの銀"を初めて手にしたとき、衝撃を受けた。その無限に広がる才覚に。
いつかこういう作品で、自分の出来る全てを尽くして演じたいと思った。彼女の作品には果てがない。ゆえに、どこまでも可能性は広がっていく。まるで宇宙のように。
彼女の作品を演じることを、どこか自分の目標にしていたのかもしれない。
「…それがねェ」