自分に起こった異変に気づいたのは、

妄想に狂った女にナイフで刺された傷がようやく塞がり、稽古と撮影を再開してからすぐの事だった。


久し振りとなる稽古で、大勢の人間の前に立った瞬間、心臓がどくりと嫌な音を立てるのがわかった。

驚いて自分の腕を見れば、小刻みに震えている。頬を、嫌な汗が伝った。


ぎゅっと掌を握り締め、気づかない振りをして、なんてことない顔で台詞を口にしようとした瞬間。目の前でチカチカと光が弾けて、思わずその場にしゃがみこんだ。


『レイジ!』


その場にいた人間達が駆け寄ってくる。口々に、"まだ体調が…"と気遣いの言葉をかけてきた。