はっと、目が覚めて、一瞬酷く混乱した。


大きく開いた窓からは、カーテンが柔らかな風に吹かれて、なかとそとを出たり入ったりしている。


充分に家具の揃わない、洋風造りの部屋。

カバンひとつ、それまで持っていたもの殆どを、自宅にしていたホテルのペントハウスにそのまま置いて出てきたのだ。


アパルトマンはこじんまりとした風情だが、ワンフロア2部屋という造りのお陰で、狭苦しいと感じることもない。


鏡に映る自分は、ブルネットのウィッグをつけ、酷く不機嫌な顔をしている。体の線が出ないシャツに、ジーンズ。


元々の顔立ちもあり、正直、自分でも驚くほど女にしか見えない。

これも、役者として貴重な勉強の機会だと自分に言い聞かせるのも、いい加減うんざりだ。