『タイトル、何て読むの?』

「…"夜明けの銀"」

『日本語で言わないで。わからないわ』

『小林秀宇なら、知っているだろ。これは、彼女の処女作だよ』


彼女は、目を輝かせる。


『嘘!あたし、大ファン』

『有名になったのは、この次の作品からだからな。殆ど知られていないし、当然翻訳もされてない』


本をトランクに仕舞う。

がり、とオリビアが俺の右耳を齧った。小さく睨むと、彼女はニンマリと挑戦的な顔で俺を見上げる。