「・・・あの頃、ナナもわたしも、きっと同じくらいダメダメだったのよね。うまくやろうとすればするほど、どうしても息苦しくなって逃げ出してしまう。わたし、これでも少しだけ"おふぃすれでぃ"だったことがあるのよ」

「…まじで」

「んふ、わたしの制服姿でも妄想した?」

「してねーよ!馬鹿か、おまえは!!」

「照れない照れない。まあ、すぐにクビになっちゃったんだけどね」


少しも笑える話じゃないのに、「本当、どうしようもなーい」と軽い口調で言ってケラケラと笑う。


「時折、このアパルトマンのなかだけ、時が流れていないと錯覚するの。あの大きな窓から、季節が巡るのを観客になって眺めているような」

「・・・」

「わたしはいつだってそんな気分だけど。ナナは違ったんだね。きちんと部屋を出て、自分の時間を生きている。それが当然なのに、寂しいと感じるなんて随分勝手な話だよ」



シュウは、伏せていた視線をゆっくりと持ち上げる。そして、その薄い茶色の瞳には、どこか戸惑った顔をした自分が写っていた。