何かを思い出すように、シュウがくつくつ笑う。
俺が知らない人間の名前だ。それに、なんだか胃のしたあたりがもやもやするような、嫌な感覚に首を傾げる。

なんだこれ…。


「…ナナって?そういえば、きのう俺のこと間違えてその名前で呼んでたけど」

「げ、まじで?うわあ、恥ずかしいな」


シュウは、驚いた様子でサッと顔を赤く染めた。
ぽりぽりと頬をかいて、まるで誤魔化すように千切ったトーストをミネストローネにひたして口に放り込んだ。


「なんか、シュウが女友達とガールズトークとかするのって想像出来ないよな」

「…怜ちゃん、さりげなくわたしのこと何だと思ってるんですかね。大体、ナナは女じゃないし」


その言葉に、俺は思わず"え、"と声を漏らした。