どこかで、俺は彼女が"小林秀宇”であるということを信じきれずにいた。
海を渡り、孤独と無力感に苛まれていた自分に、いつだってそのページをめくるだけで全く異なる世界をくれた特別な人。
ずっとずっと、小林秀宇のファンで、こんなにも色彩豊かな世界を創造する彼女とはどんな特別な人間なのだろうと思っていた。
だから、正直言えば初めてシュウがそうだと知ったときは心臓が止まるくらい驚いたし、随分自分勝手だけどガッカリもして。
だって、仕方ないじゃないか。
どこまでもマイペースで、酒が好きで、ほんの些細なことで喜んで、…こんな、人前に出ることすら出来なくなった役者に鍋を振る舞うような変な女。
「・・・っ、」
差し込むの陽の光のせいで、シュウがちょっと動く度にその長い髪がきらきらと金色に光る。
それがとても綺麗だと思った。
クレノサツキが思わずこの光景にシャッターを押した理由が、なんとなくわかる気がした。