「バコーンって、何やらかしたの?」
確信犯のように、悪戯っぽく口角を吊り上げて言った。
「解らない?」
「解るけど」
「なんで体育いつもサボってるの?」
突然の彼からの質問に頭が回らない。こんなにも自分は本番に弱い人間だったのだろうか。いや、
「どうしたの?」
「いや、えと」
「ん?」
「運動するのが嫌いなの」
違う、嘘。
「そう。この花壇、花森さんの?」
「私のってわけじゃないけど、私しか部員がいないから、私のになるのかな」
本番に弱いんじゃないんだ、聞かれたくない事だからなんだ。緊張なんかじゃないんだ。焦っているんだ。
体中の傷が疼く。
「上からずっと見てたんだよ、休み時間の度に、花森さんが花を見に来る所」
傷の疼きが止まる。またも、彼の言葉に体が強ばる。この先に出てくる言葉は誰だって解るだろう。先程から言いたげな素振りばかりを見せてきた、二文字の言葉。
「花森さん」
彼からこの言葉が自分に向けられるなんて、信じたくはなかった。
「好きです」