「俺、河谷白夜。白い夜って書いて、きょうや。」
「私は、」
「花森白子ちゃんだよね、いつも体育の時間屋上でサボってる。」
「?!」

驚いて声が出なかった。
私の名前だけじゃなく、少しおちゃめな行動までバレていた。
彼の名前を知れた喜びよりも、私の事を何故知っているのか、という疑問の方が大きかった。

「驚いてる?」
「人並みには」

彼は喉を鳴らして笑った。

「いつも、見てたから。綺麗だなぁって」

驚いて息が出来なかった。デジャヴ。

彼がこちらを見て笑う。
今、思った。私は彼の笑顔が好きだ。
ずっと見ていた。でも、彼はいつも無表情で。喋らなくて。
彼の笑顔と声は、私を金縛りにする程度の効力があった。