「花森さん」
酷い顔。誰かに踏まれたのだろう。数時間前には、凛と背筋を伸ばして、空を見上げていたのに。
綺麗な花をようやく咲かせ、皆に見てもらえるはずだった、この花の初舞台。
「花森さん」
低い声が隣から聞こえる。
直ぐ様音のした方を振り向くと、警察官ばりのキラーアイで、いつも見つめていた灰色の彼が居た。
花森さん
再婚し、新しくなった私の苗字。まだ馴れてないからか、すぐに私を呼んでいるんだ、とは判断出来なかった。
花森さん
私はこの名前が嫌い。
親も、嫌い。
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