☆司side





いつも優しく俺を包み込む壁も、

今はすごく、冷たくて。

いつも明るく俺を照らす電球も、

今はすごく、暗くて。

いつも笑って俺の横にいる沙夜も、

今はどこにも、いなくて。


駆け出した沙夜の残像を、俺はずっと見ていた。



沙夜…。

君は、さよならを言いに来たの?

キミは、サヨナラをいいに来たの??

俺たちは、もう終わりなの?

オレたちは、もうオワリなの??


問い掛けても答えなんて出ない。

分かってる。

分かってるけど…――


本当はね、沙夜。

うざい、なんて思ったことなんてなかったよ。

でも、何度も傷付いた―

そして、今も。

俺の言葉の裏に隠された俺の想いを分からないまま、
さよならを言いに来た君に、

傷付いたんだ。


だから、俺は、沙夜を追いかけられなかった。

沙夜の残像を、

あまりにもはっきりと残る残像を、

見ていることしか、できなかったんだ……。



でも。

もしもこの時、俺が沙夜を追いかけていたら。

俺たちは、また、すぐに元に戻れてた?

俺は、沙夜の横で、笑えてた?

沙夜は、俺の横で、笑えてた?


誰よりも近い場所で、お互いが安心できたの??