☆司side





「優、いいか?」

「あー。あと5分待て」


優の寮の扉の取ってを掴んだまま、腕時計を見る。

、、、あと2分。

、、、あと30秒。

、、あと5。

、、あと3。

、2。

、1。


「司。いーぞ」

…ジャスト5分。

本当1秒の狂いもねぇな、優は。


「今メイと電話してたからさ。悪ぃ」

「平気」

「何があった?」


、、、

―キライ

なんて心にもない言葉。

だけど、口から出たのは、それ以外のなんでもなかった。


俺は、沙夜の笑顔を、拒絶した。


「…いや。なんでも」

「嘘吐くな。下手なくせに」

「…。沙夜も下手だったよな、、」

「は?」

「沙夜だよ、沙夜」

俺は、どこにもぶつけられない思いを、優にぶつけるしかなかった。


「翔か、また」

「…優」

「ごめんな。兄貴にだけは、俺は何も言えねぇ」

そうだった。

あの人―翔―は、まるで、雲のような人だ。

すぐ近くにいて、手を伸ばせば届きそうなのに。

絶対に掴むことのできない、得体の知れない何か。

そう。

翔さんは、そんな人だ。