★沙夜side





「司?」

「、、、」

「司」

俯いていて 表情が見えない。

「ねぇ」


「、、どうして?」

司が顔をあげる。

瞳の奥が陰っていた。

「何が?」

そう言いながら、どぎまぎしていた。

思い当たることは あるから。

「どうして、、ここに来たの」

正直、拍子抜けした。

けど、確かに、部屋にいる司がさっきのことを見たはずがない。

司の部屋の窓からは、私達のいた中庭は見えない。


「なんだ。そんなことか」

私は微笑んだ。

その言葉に反応したように、司の眉が動いた。

「そんなこと?」

聞き返した司の目は、明らかに怒っていた。

「司に会いたかったから来たの。だめ?」

そう言うと司は自嘲気味に笑った。

「沙夜は、嘘つきだね」


「、、え?」


司の言葉にはトゲが混じっている。

でも、その意味が分からなかった。


「沙夜」

「なに?」

「俺のこと好き?」


私は焦っていた。

司がこんなふうに怒ったのは初めてだった。


「うん、好きだよ?」


「そう」


「ねえ司?どうしたの?」


立ち上がった司は

それには答えずに


「俺はね、沙夜」


かすれた声で


「沙夜のこと、、大キライ」


信じられない言葉を残して

部屋を出て行った。