☆司side





「司?」

「…」

「おい」

「…」

「司!しっかりしろよ!」


優のその声と同時に、翔さんの手が、沙夜から離れた。

「、、優」

「大丈夫だろ。俺たちには見えなかっただけで、アイツが沙夜を抱きしめたのかもしれないだろ?」

沙夜が翔さんに頷いて、寮に戻っていったのが分かった。

「優。俺さ、」

「好きにしろ。なんでも言え。できることはやるよ」

優は、そう言って微笑む。

優のこんな顔は、俺と青木(と沙夜?)しか見れない。

けど、それだけでも十分だった。

「悪ぃな」

「いーよ、別に」


優が手をグーに丸めて俺の前に出す。

俺も、手を出して、

コツンコツン、と二度うつ。


「覚えてるもんだな、結構」

「あぁ。昔は…優が無邪気だった頃は、よくやったよな」

「悪かったな、今は違くて」

そう言って笑わす優。

分かってる。

優の優しさだってことくらいは。


俺は、そのまま寮に戻った。


窓から、トントン、と聞こえて、さっと振り返る。

「、、、沙夜」

「司?入ってもいい?」

…そういつものように微笑む沙夜。


嘘が吐けない?

まさか。そんなことない。

沙夜は、嘘を吐くのが上手くなった。

いつものように、何気ないように、、

翔さんとあんなことがあっても、


俺と話せるんだから。