急いで返信を打って、あたしは足早に珍獣さんの家へと向かった。



早く会いたい。



きっとあたしは珍獣さんのことが好きなんだろう。



顔も見たこと無いし、謎だらけだし、つかみ所なさすぎな変人さんだけど。

そんな人に恋をすることが、素敵だと思えた。



今日で一緒に住むのは終わりだけど。

メールだって、電話だってできるし、会うこともきっとできる。



ミユキさんの言ったみたいに、まるで魔法みたいにあたしは珍獣さんに惹かれていった。


ミユキさんがそういう意味で言ったのかどうかはわからないけど。




合い鍵を握りしめる。


もう、すぐそこ。





珍獣さん邸の門の前に来たところで、あたしは人にぶつかった。



顔面直撃で、ほんとに痛い。

涙目になりながら、前を見ると見知らぬ人。


黒いスーツに身を包み、サングラスをかけて、背の高い。


よく外国の映画で見るような、ボディガードみたいな風貌の人。

その異様な雰囲気に、あたしはポカンと口を開けたまま立ち尽くしてしまった。



「すみません、大丈夫ですか」


そのまま硬直していたあたしに、その人が声をかける。

あたしは慌てて何度も頷いた。


「大丈夫です、こちらこそごめんなさいっ!」


その人はもう一度軽く頭を下げると、近くに止めてあった黒い高級そうな車の運転席に乗って去っていった。



何だったんだろう、今の人…。

この家から出て来たよね……?



あたしはしばらく門の前で立ち尽くしていた。