「あたし、多分今日で珍獣さんの家出るんです」



結局、単刀直入な言葉しか浮かんでこなかった。

ミユキさんの驚いた顔が視界に入る。



「行く宛が見つかったのね?」


「はい、友達が帰ってくるんです」


そう、と呟いてミユキさんは視線を伏せた。

何だか居たたまれない気持ちになって、あたしは口を開く。



「ミユキさん、あたし変なんです」


「どういうこと?」


ミユキさんは首を傾げていた。

あたしも自分の唐突な言葉に少しびっくりした。



「うまく言えないんですけど、なんかすごく寂しいんです」


呟くくらいの声でそう言うとミユキさんは表情を崩さないまま黙り込んだ。

しばらくあたしも黙っていると、ミユキさんが口を開いた。



「それは、トーマスと離れるのが……ってこと?」

「わかんないです」


やっぱり混乱したままこんなこと言うんじゃなかった、と後悔しながらも、勝手に動いてしまう唇。



「さっきは珍獣さんに抱きしめられて。

別に嫌じゃないのに今だって泣きそうで。


どえしたら良いのかわからなくて苦しいです」



顔を上げられなかった。



ああ、あたし、意味わかんないこと言ってる。




何をどうしたいんだろう?


一体誰にどうして欲しいんだろう?






「そうね、私が思うに、魔法なのかもね」



「へ」



ミユキさんの口から出た摩訶不思議な単語に、あたしは間抜けな声を漏らした。