外で寝るには早すぎるであろう3月。まだまだ蕾を膨らませる桜に、背を預け眠る少年。

紺のブレザーに身を包み、だらしなく締められた赤のネクタイはそっぽを向いている。

そんな少年に近づく小さな影と大きな影。


「おい! 起きろ!」

「おいおい、無駄とわかっててやってるだろ。任せろ、このまま連行する」


大きな影の男が眠る少年の体を担ぎ、鞄を小さな影の少女へ手渡した。


爽やかに晴れ渡る日の朝。卒業式だというのに、いつもの朝とあまり代わり映えのない三人の卒業式。