「アンタ、私の執事でしょうが」

そう、この人の良さそうな顔をしている男は、私の専属執事の樋野 明(ひの めい)。
 女みたいな名前でも立派な25歳の男です。

「ひどいですね。嬢。どこの令嬢がそんな言葉遣いするんでしょうか」
「私は、お嬢様として育ってないから。 唯の“実柚”でしかないの」

最後の言葉は小さくなってしまった。彼も私が自由になれない事は知っている。
 たとえ偽者を作ってでっち上げたとしても、あの人は了承しない事も、計画を立てた時点でバレる事も。

 私は子供で何も出来ない。養われている。 自由になれる大人の前にその翼をもがれてしまう。自己決定権はない。唯の人形。

「あの方なら、きっと変えてくれますよ」

さっきのを見ていたのか、そんな事を言った。 言葉どうり変わる気がする

どちらに転がるかは、わからないけれど

 
    変わるのは現実となる―――