「ご無事ですか?! お嬢様!」

そう言って入ってきたのは、もちろん明だ。
 焦った顔をしているけれど、内心はニヤニヤしているだろう。口角が少し上がっている。

 た、楽しんでるし……

それに少し呆れながら答える

「無事だよ。一般人に怪我なんか負わされないよ。これはメイクだし」

まぁ、全部じゃないけどね。見栄は張らせてもらいます。
 
――――――〝一般人〟

そう分けたのは、私が普通ではないとわからせる為。

「まったく、無茶しちゃって……」

そう聞こえたが、無視した。他の人たちは驚きすぎて聞こえてなかったみたいだけど。

驚いて固まったままだった女子が明を見て、頬を染めはじめた。

 明は、芸能人よりはカッコ良くないけど、まぁまぁかっこいい程度。
それに、物腰の柔らかい態度と、落ち着いた雰囲気が人を引き寄せるらしい。
    ちなみに近所のおば様たちに人気がある。

「あの―――」

そう明に、上目遣いで言い寄ろうとする奴がいた。
 可愛いと思っているの? それ。
やる人を選ぶと思うけど……

続きの言葉に何がくるかわかったのか話の途中で明が口を挟む

「わたくし、性格ブスは嫌いなので」

そう言われて、女子は沈黙。 
 うわぁ……言ってしまったよこの人。一刀両断。なのかな?
笑顔だっただけに、軽くトラウマじゃない?

「なっ――――」

激昂した一人が何か言おうとした。
 それを横目で見た明がとどめに

「しつこいですよ。人を苛める事でしか人と関われない人なんかが、人に好かれる訳ないでしょう」

さっきとは違った冷たい声。もう、誰も何も言えなかった。

 そんな空気の中質問する一人がいた。

「一般人? その人は?」