近付いて来る老人に、門番たちは慌てて説明を始める。
「だ、大臣!この不審な者たちがっ!」
「コイツなんか、自分はアスティ王子だとか言い出してっ…」
一人の門番が、アスティの腕を掴んで老人の前に突き出した。
老人の緑色の瞳が、アスティに向けられる。
「…誰が、アスティ王子だと嘘を…」
言葉が途切れたかと思うと、老人の瞳が、徐々に見開かれていく。
そんな老人に対し、アスティは微笑んでいた。
「久しぶり、チェディ」
「……っ、アスティ王子…!?」
老人は本物のアスティだと分かったのか、すぐに門番を睨む。
「貴様ら!この方は我がメルティアス国第一王子、アスティ様だぞ!」
門番たちは一瞬面食らった顔をすると、すぐに地面に跪いた。
「ハッ!非礼をお詫び申し上げます!」
門番に捕まれていた腕をヒラヒラさせると、アスティは笑った。
「ん。大丈夫だよ」
そう言って、老人を振り返る。
「…チェディ、父さんに会いたいんだ」
「………!どうぞ、お入り下さい」
老人は一瞬目を見開くと、恭しく頭を垂らした。