大きな大きな、門の前。


「誰だお前たちは」


二人の門番は、あたしたちを見ると険しい表情になった。


自分たちの国の王子に向かって、「誰だ」って言うのはどうかと思うけど。


アスティの話によれば、家を出たのは八年も前だって言うから仕方ないのかもしれない。


「悪いが、現在国王様への謁見は出来ない。そう報せが届いているだろう?」


シッシッ、と犬でも追い払うような仕草をされ、思わずムッとした。


アスティは隣で、何て名乗ろうか考えているみたいだった。


「えっと…、オレ、アスティだけど」


ああ、そんな正直に名乗っても…


「何ィ?お前が行方不明のアスティ王子だと?嘘つけ!」


案の定、疑いの眼差ししか向けられず、状況は悪くなる一方。


「へえ、オレ行方不明なんだ」


「ちょっとアスティ、そんな暢気な…」


その時、鋭い声が響いた。



「―――そこ!何をやっている!」



その声に、門番たちはビシッと姿勢を正す。


門の奥から現れたのは、偉そうな白い口髭を生やし、紺のローブを身に纏った老人だった。