「実雨……」


ウタクのかすれた声が聞こえた。

私に呼び掛けるように、愛おしむように。


大神様は私とウタクを交互に見て、鼻で笑った。


「綺麗事ばぁ言うて。もうすぐ死ぬのになぁ」


おちょくるように扇子で私の頭を叩く。

それを振り払う元気はもうないけど、一つだけ言えることがある。


「死なない……」


諦めちゃいけない。

私の命は私だけの命じゃない。

私がウタクを失いかけたような思い、ウタクや母にはさせない。



「ふーん。あ、そうじゃ。死なん言うとって、死んだらそれも裏切りじゃが」


「裏切らない……私はウタクのことも……大神様のことも」



私の言葉に、大神様の動きが止まった。